文芸賞受賞作「おらおらでひとりいぐも」を読む

今日は4月10日。いまは「春の全国交通安全運動」実施中ですね。そして10日は「交通事故死ゼロ」を目指す日です。実現したでしょうか。

第54回文芸賞受賞作「おらおらでひとりいぐも」を読んでみました。作者は60代の人で、私も大体同世代ですね。しかも東北の岩手県出身の作家。東北は同じです。そのためかかなり読みやすい作品でした。作中にふんだんに使われている「岩手弁」も意味不明の個所もありましたが大体わかりました。

岩手県は最近はよくテレビに出てくるが、昔はそれほどではなかった。だから私の「岩手県」のイメージは「謎のような地帯」でしたね。この本が世に出ることで「岩手県」が人々の関心を大いに引き起こしたでしょう。

本の内容は、岩手県に生まれた主人公「桃子さん」が長じて東京に出てきて結婚し子供を産み平凡な生活を送っているところに、ある日突然夫がなくなってしまう。この夫との出会いは、自分も慣れ親しんだ故郷の山「八角山」が縁なのである。惚れていた夫に死なれてこれからどうして生きていこうかという「桃子さん」の心の葛藤が、160ページの本の大部分をなす。夫はなくなったという事実が報告されているだけで、桃子さんとの間にどのような生活があったのかは書かれていない。この部分が書かれてあると作品はより説得的になったと思いました。それと子供の名前も登場するが、全然子供のことは書かれていない。子供は「お母さんは何でも自分の思うようにしたがる」というが、私も「桃子さん」にはそう思いました。

作品は平易だがかなり濃縮されていて、書くことに「初めて」の作家だとは思えませんでした。若い頃から投稿を続けている人なのではないでしょうか。受賞作以前にはどんな作品を書いていたのかということにも興味を持ちました。授賞おめでとうございます。