2020年「新年歌会始」の入選者と天皇・皇后・皇族のお歌

今日は1月18日、東京は小雨模様の天気です。気温は3度とぐっと冷え込みました。

16日、皇居宮殿「松の間」で今年の「新年歌会始」が催されました。今年のお題は「望」です。全国・海外から1万5324通の応募があったそうです。その中から10人の方が入選されました。

《新年歌会始入選者の作品》

◎森紀子(もり としこ)(74)、三重県四日市市の主婦
茶刈機のエンジン音は響(ひび)かひて彼方に望む春の伊勢湾

◎若山巌(わかやま いわお)(74)埼玉県所沢市、農

百アールの田圃アートの出来映えを眺望するに櫓を組みぬ

◎保立牧子(ほたて まきこ)(70)東京都世田谷区、主婦
創薬の望みを託す天空の「きぼう」の軌道に国境はなき

◎石井信男(いしい のぶお)(64)福岡県直方(のおがた)市、元会社員
息を止め望遠鏡で本物の土星の環を見た夏の校庭

◎粟屋融子(あわや ゆうこ)(60)北九州市門司区、寺の坊守
ランドセルは海渡りゆくアフガンの子らの希望を抱き留むるため

◎柴山与志朗(しばやま よしろう)(60)長崎県佐々町佐世保市立中学校教員
望(もち)の日は漁師の父が家にゐて家族四人で夕餉を囲む

◎村上秀夫(むらかみ ひでお)(56)山形県酒田市、公立小学校校長
それぞれに月傾けて子どもらは墨くろぐろと「望」の字を書く

◎森教子(もり きょうこ)(49)横浜市港北区、会社員
今よりも人々の文字うつくしき平和を望む戦時下の日記
◎土田真弓(つちだ まゆみ)(33)大阪府豊中市、大学職員
眺望はどうだ晩夏に鳴く蝉を咥へて高く高く飛ぶ鳥
◎篠田朱里(しのだ あかり)(17)新潟市江南区、高校3年生
助手席で進路希望を話す時母は静かにラジオを消した

《皇族のお歌》

天皇陛下
学舎(まなびや)にひびかふ子らの弾む声さやけくあれとひたすら望む

◎皇后・雅子さま

災ひより立ち上がらむとする人に若きらの力希望もたらす

 ◎秋篠宮さま

祖父宮(おほぢみや)と望みし那須の高処(たかど)より煌めく銀河に心躍らす

秋篠宮紀子さま

高台に移れる校舎のきざはしに子らの咲かせし向日葵(ひまはり)望む

秋篠宮家長女眞子さま

望月に月の兎が棲まふかと思ふ心を持ちつぎゆかな

秋篠宮家次女佳子さま

六年間歩きつづけし通学路三笠山(みかさやま)より望みてたどる

常陸宮妃華子さま

ご即位の儀式に望みいにしへの装ひまとひ背(せ)なを正(ただ)せり

三笠宮寛仁親王妃信子さま

雪襞(ゆきひだ)をさやかに望む富士愛(め)でて平和な御代のはじまりにあふ

三笠宮家彬子さま

言の葉のたゆたふ湖の水際から漕ぎ出ださむと望月の舟

高円宮妃久子さま

サッカーに関はりたれば五輪への出場国をひた待ち望む

高円宮家長女承子さま

初めての展望台にはしやぐ子の父母とつなぎあふ小さな両手

《召しうどの歌》

◎栗木京子

観覧車ゆふべの空をめぐりをりこれからかなふ望み灯して

《選者の歌》

◎篠弘

書き上げし稿(かう)祈りてはファックスす望外なことを近頃はじむ

◎三枝昂之

丘陵に街に暮らしの歩をとめて人は仰げり望月立てり

永田和宏

なだらかな比叡の肩を照らしつつ昇る幾望(きばう)の、はた既望(きばう)の月

◎今野寿美

港から汽笛とどけば手にとれる望遠鏡なり蝶々夫人

◎内藤明

新しき靴履きて立つ街角にわが望郷の方位をさがす